A 6-1 光療法により改善した非24時間睡眠・覚醒症候群の一例
◯渡辺 剛1、梶村尚史1、加藤昌明1、関本正規1、中林哲夫1、堀 達1、高橋清久2
1. 国立精神・神経センタ−武蔵病院 2. 国立精神・神経センタ−
 非24時間睡眠・覚醒症候群に対する治療としては、ビタミンB12の投与や光療法などが行われているが、臨床上治療抵抗性の症例を経験することが多い。今回我々は、光療法によりフリ−ランしていた睡眠相を好ましい時間帯に固定でき、その結果、社会適応も良好となった非24時間睡眠・覚醒症候群の一症例を経験したので報告する。
 [症例]17歳、男性。精神的にも身体的にも特に異常は認められず、中学では友人は多くはなかったが、成績は上位で遅刻や欠席もなく適応は良好であった。高校2年生の6月末、特に誘因なく食事や排泄を除き4日間眠り続けた。翌週より登校できたが、それ以後朝起きにくい状態が続くようになった。夏休み後半には昼夜逆転の生活となり、その後は1ヶ月に2〜3日ほどの頻度で昼過ぎまで12時間以上寝てしまうようになった。さらに、10月から過眠の頻度が増加し学校を休みがちとなったため、11月に近医精神科を受診した。この時に適応障害の診断を受けmethylphenidateの投与を受けたが、過眠や朝の起床困難は改善しなかった。かろうじて高校3年生に進級したが、3年生の6月から入眠時刻と起床時刻が毎日約1時間づつ遅れていくようになったため同年6月に当院睡眠外来を初診し、精査及び治療目的にて7月に入院した。
 [経過]睡眠・覚醒リズム表から得られた睡眠・覚醒リズムは入院前には約25時間の周期となっており明らかにフリーランの状態にあった。入院後の数日間は、睡眠リズムが24時間に同調したように見えたが、その後再び遅れる傾向が認められたため光療法室において光療法を開始した。位相反応曲線に従って概日リズムの位相前進に効果的であり、なおかつ睡眠を妨げないと思われる時間帯、すなわち最低体温時刻の1時間30分後から3時間の光照射を行った。その結果、光療法開始と同時に睡眠の位相が前進し始め、開始後ほぼ1週間で望ましい時間帯に入眠、起床が出来るようになった。光療法を3週間施行したところで退院となり、その後は自宅で携帯用光照射装置を用いて光療法を継続したところ、24時間周期の睡眠・覚醒リズムは退院後も持続し、遅刻や欠席をすることなく登校が可能となった。また、光療法開始前後で深部体温を39日間にわたって連続計測した結果、睡眠と体温リズムとは常に良好な位相関係すなわち内的同調状態にあり、睡眠相の前進と平行して最低体温の出現時刻も前進していた。
 入院中に光療法前後で睡眠ポリグラフを施行した。その結果、光療法前と比較し光療法後では、総睡眠時間が短縮しStage 1,2とStage REMの出現時間が減少した。また、中途覚醒が減少したため睡眠効率が上昇した。stage3+4の長さには変化が認められなかったが総睡眠時間が短縮したため%stage3+4は増加した。すなわち治療によって治療前よりも効率の良い睡眠をとることができるようになった。
 [考察]本症例は、前医においては適応障害と診断されていたが、光療法により登校が可能となった経過な どから睡眠障害の国際分類における診断基準より一次性非24時間睡眠・覚醒症候群であると考えられた。治療としては光療法、入院という社会的同調因子、治療意欲などが症状の改善に役立ったと思われるが、 光療法前には十分な改善が得られなかったことから光療法が特に有効であったと考えられた。
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