| B 3-1 | 睡眠不足症候群と考えられる4症例 |
| 佐々木佳子、齊藤 靖、高橋祐二、小川由理子、神林 崇、杉山智成、清水徹男 | |
| 秋田大学精神科学教室 | |
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日中の過度の眠気と居眠り(EDS)は 睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーの症状と考えられやすい。しかし、24時間社会といわれる現在、若年者の間で自覚しないままに慢性の睡眠不足に陥り、そのためにEDSを来して当院を受診するものが目立ってきている。今回我々は、日中の過度の眠気(EDS)を主訴に受診した睡眠不足症候群(ISS)の4症例について終夜PSGとMSLTを含む精査を行ったのでその結果と各々の臨床的特徴について報告する。 【症例1】19歳男性、看護助手。幼少時より10時間以上の睡眠を必要としていた。高校卒業後某病院の看護助手として就職したが、交代勤務によって適切な睡眠時間を確保できずに、作業能率の低下と居眠りを来たすようになったため受診した。 【症例2】16歳男性、高校生。高校一年生の春から授業中に頻回に居眠りすることを教師に指摘され、夏頃には、授業中は必ず眠ってしまうようになったため受診した。 【症例3】24歳女性、歯科助手。平成5年頃より日中に著しい眠気が生じることが多くなり、“歩いたまま眠ってしまうこともあった”という。ただ眠いだけかと思い放置していたが、仕事に支障を来すようになったため受診した。 【症例4】14歳男性、中学生。小学3年生の頃から午前中の眠気が強く、中学生になってからは朝食を済ませるとすぐにまた眠ってしまうようになった。さらに授業中に頻回に居眠りする事を教師に指摘され、受診した。 睡眠日誌の特徴は,症例1では,通常の睡眠時間は9時間程度であるが,休日には10時間以上の夜間睡眠をとっていた。症例2では,休日や長期休暇中を含め,普段の睡眠時間は7時間程度であるが,毎日のように授業中に5時間程度の居眠りをしていた。症例3では,睡眠時間が不規則であるのに加え,入眠時刻が午前2〜3時頃と後退する日が2、3日間程持続したり,また,入眠時刻が毎日に1〜2時間ずつ遅れるという睡眠のパターンが3日間程続くなど,非定型的ながら概日リズム睡眠障害の特徴も認められた。症例4では、通常6〜8時間の夜間睡眠であるが、授業中に1時間ほど居眠りすることが頻繁にあった。全ての症例において、睡眠麻痺、入眠時幻覚およびカタプレキシーの存在を示唆するエピソードは認められなかった。 HLA DR locusは、症例1のみDR2陽性であった。症例1〜3に対して終夜PSGを施行した。終夜PSGにて患者が8時間以上の夜間睡眠をとったことを確認した翌日に施行したMSLTでも、症例1および3の平均入眠潜時は5分以下であり、病的な眠気を呈していた。終夜PSGでは、いずれの症例の入眠潜時も15分以下であり、85%以上の高い睡眠効率を示し、睡眠呼吸障害や周期性四肢運動障害は認められなかった。また、MSLTおよび終夜PSGのいずれにおいても、SOREMPは出現しなかった。症例4では,自宅にて9時間の夜間睡眠をとった翌日に施行したMSLTは正常範囲(9分37秒)であった。頭部MRIおよびCT検査を含む他の臨床検査の結果、EDSを説明し得るいかなる内科的、精神科的障害は見出されなかった。 以上の結果から、今回提示した4症例のEDSおよび関連症状は睡眠不足症候群に起因するものと考えられた。症例1については、幼少時より持続する睡眠習慣の特徴から、長時間睡眠者における睡眠不足症候群と診断された。 昼夜の区別なく活動することが可能な現代社会においては,無意識のうちに自らの睡眠時間を短縮したり、睡眠覚醒のリズムが不規則になるなど、健全な睡眠習慣のもとで生活を送ることは困難になってきている。また,必要な睡眠時間については大きな個人差があり,同世代の平均的な夜間睡眠をとっている場合でも,それが個人にとっては必ずしも適切な睡眠時間ではない場合がある。従ってEDSを訴える若年者ではISSを疑って睡眠日誌、終夜PSG検査と翌日のMSLTなどの検査を行うことが必要である。 | |