B-22 閉経時不眠症へのHormone Replacement Therapyの試み
大阪大学医学部精神医学教室、 大阪大学健康体育部健康医学第三部門、  大阪回生病院睡眠医療センター**
○寺島喜代治, 三上章良, 渡辺琢也, 立花直子**, 本多秀治, 京谷京子, 漆葉成彦, 手島愛雄, 杉田義郎, 武田雅俊
  【目的】われわれが以前行った疫学調査では、不眠の訴えや、睡眠薬の使用において、40歳以降になると性差が出現し、男性より女性に多くなると報告した。わが国の女性の閉経年齢の平均はおおよそ50歳と言われ、女性の不眠の訴えの急激な増加と時期を同じくするのは興味深いところである。ICSDにおいても月経随伴睡眠障害のなかで閉経時不眠症が現在検討されており、その存在は認識されているが、実態についてはほとんど知られていない。今回われわれは、典型的な更年期障害の症状である発作性ののぼせ(hot flashes)や寝汗等の血管運動神経障害症状を持ち、閉経の時期にほぼ一致して入眠困難や熟眠障害等の症状が始まった患者を閉経時不眠症ととらえ、エストロゲン製剤と黄体ホルモン剤によるホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy, 以下HRTと略す)を施行し、その影響について検討した。

【対象と方法】対象は、閉経時不眠症群8例(49〜57歳、平均53.0歳)である。治療開始前に、血中のLH, FSH, Estradiol (E2)を測定し、治療前後にKupperman更年期指数を算出した。治療にあたり、更年期障害の症状とHRTについて十分説明を行ったうえで開始した。投与した薬剤と1日使用量は、エストロゲン製剤として結合型エストロゲン0.625mg、黄体ホルモン剤として酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mgまたは酢酸クロルマジノン4mgで、投与期間は7カ月から1年8カ月であった。睡眠薬や精神安定剤等は一切併用しなかった。また8例の閉経時不眠群と、不眠の訴えを持たないほぼ同年齢の正常対照群女性13例(45〜57歳、平均51.9歳)に連続2夜終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を施行し、2夜目を解析し比較した。睡眠段階の判定はRechtschaffen&Kalesの基準に準じ20秒毎に視察で行った。睡眠変数の推計学的検定には、閉経時不眠症群と正常対照群の比較にMann-WhitneyのU検定、閉経時不眠群の治療前後の比較にpaired t 検定を用いて行った。

【結果】1)閉経時不眠群は、FSH>LHのFSHとLHの高値、E2の低値という更年期パターンを示した。2)Kupperman更年期指数は治療後には全例で減少し、平均値で25.6点から14.4点となり、血管運動神経障害症状は早期に改善し、自覚的睡眠感の改善は少し遅れて認められた。3)閉経時不眠症群と正常対照群の睡眠変数:閉経時不眠症群では、睡眠効率が低く(p<0.01)、睡眠潜時が長かった(p<0.01)。REM関連指標に関しては、REM睡眠潜時が長く(p<0.05)、REM期の回数が少なかったが(p<0.01)、REM段階比率やREM密度に有意差はなかった。4)閉経時不眠症群の治療前後の睡眠変数:治療前に比べHRT後睡眠効率が高くなり(p<0.05)、睡眠潜時が短縮し(p<0.05)、入眠しやすくなったという自覚的改善感と一致した。

【考察】HRTが睡眠を改善する作用機序としては、夜間ののぼせや寝汗が実際に減少すること、夜間の血中エストロゲン値とトリプトファン値の相関、性ホルモンの催眠への直接作用等が複合的に関与していると推察される。閉経前後に始まり、抑うつ症状等の他の精神症状を伴わない不眠症に対しては、HRTが治療の選択肢として考慮される必要があると考える。

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