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2.意識水準と脳波パターン
 頭皮上に電極を置き,大脳皮質の微弱な電位変動を,増幅器によって拡大して記録したものが脳波である.脳波は脳の機能状態,とりわけ大脳皮質の機能状態と密接に関係しており,意識水準とよく対応して変化する.脳波は,脳の活動水準が高いほど周波数の高い波が多くなり(速波化),活動が低下すると周波数の低い波が多くなる(徐波化).
 図1はヒトの意識水準と脳波パターンを示したものである.覚醒し考えごとをしたり,周囲に注意をはらっている状態では,1列目のような13〜30Hzの振幅の小さな速い波(ベータ波)がみられる.眼を閉じて安静にしていると2列目にあるようなサインカーブによく似た律動波が現れる.これがアルファ波で,周波数は8〜12Hzで振幅は50μVくらいである.1μVは1Vの100万分の1であるから,非常に微弱な電位変動である.不安や緊張があると,眼を閉じてもなかなか安静状態になれない.このような人の脳波はアルファ波がしばしば中断してベータ波が現れる.このような性質に注目して,アルファ波はリラクセーションの指標として活用されている.
さらに深い安静状態に入ると,3列目のようなパターンになる.アルファ波に代わって4〜7Hzのシータ波が出現してくる.うとうとした状態で,半醒半睡状態あるいは入眠期と呼ばれる状態である.外見上は眠っているのとほとんど変わらないが,本人は目覚めていたと主張する.脳波の変化に加え,入眠期にはゆっくりとした眼球の振子運動(slow eye movement:SEM)がみられる.[註1]





図1. ヒトの意識水準と脳波パターン


 さらに意識水準が低下すると,4列目のように基線がゆらぎはじめ,時として14Hz前後の速い波が紡錘状に群発する.この波は睡眠中に限って出現するので,睡眠紡錘波(sleep spindle:矢印の部分)と呼ばれている.この睡眠紡錘波が出現し始めると,ゆっくりとした眼球運動(セム:SEM)は停止し,呼吸は規則正しい寝息になる.男子は覚醒中は腹式呼吸であるが,この時期から胸式呼吸に変わり,睡眠中は呼吸運動に性差はなくなる.この時期に起こして聞くと,大部分の人が眠っていたと答えるようになり,行動的にも内省的にも睡眠状態に入っていることが分かる.
 眠りがさらに深くなると5列目のように,脳波の周波数は3Hz以下に下がり,振幅は200〜300μVくらいまで高くなる.この遅い波が大徐波あるいはデルタ波と呼ばれるものである.2Hz以下の徐波が連続する睡眠状態を徐波睡眠(slow wave sleep:SWS)と呼ぶこともある.感覚・知覚閾も高く,小さな声では呼びかけてもなかなか目覚めない.行動的にもっとも深い眠りである.

Penfield,W. & Jasper, H.H. 1954 Epilepsy and the functional anatomy of the human brain. Little Brown

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