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3.ノンレム睡眠とレム睡眠
 脳波が意識水準とよく対応して変化し、特に睡眠中は著明な変化を示すことから、脳波パターンによって睡眠状態を分類し、眠りの深さの指標とする試みがなされてきた.これが睡眠段階(sleep stage)である.今日も脳波が主要な指標であることには変わりがないが、レム睡眠の発見以来、眼球運動と頤筋の筋電図などを同時に記録する睡眠ポリグラム(polysomnogram:PSG)の変化を総合して判定するようになった.図2は睡眠段階の標準判定基準を示したものである.



図2. 睡眠段階の標準判定基準

[Rechtschaffen,A. & Kales,A. 1968 A manual of standardized terminology, techniques and scoring system for sleep stages of human subjects. Washington. D.C. : Public Health Service, U.S. Government Printing Office. 清野茂博(訳) 1971.睡眠脳波アトラス 標準用語・手技・判定法 医歯薬出版.一部改変 ]
本書は絶版になっているが、睡眠学会事務局に申し込むと、部数限定ではあるが、複写冊子の実費を本人負担で入手することができる。

覚醒(段階W)は8〜12Hzのアルファ波と13〜40Hzの低振幅で不規則なベータ波がみられる.
 段階1に移行すると、アルファ波は消失し2〜7Hzの低振幅徐波が現れる.中心部には頭蓋頂鋭波(vertex sharp wave)と呼ばれる特徴的な波(図3,(イ))が出現する.半醒半睡状態あるいは入眠期と呼ばれる状態で,ゆっくりとした眼球運動(セム)がみられる.



図3. 頭蓋頂鋭波とK複合

大熊輝雄. 1983. 臨床脳波学 第3版 医学書院

 段階2では12〜14Hzで0.5秒以上の持続をもった明瞭な睡眠紡錘波が出現する.この段階では持続が0.5秒以上の明瞭なK複合も出現する.K複合は外的な刺激に対する反応としても出現するが,内的な刺激によっても出現し,前者を誘発性K複合,後者を自発性K複合と呼ぶこともある(図3,(ロ)(ハ)).
 段階3と4では,2Hz以下で75μV以上のデルタ波が出現する.判定区間に占めるデルタ波の割合によって,50%以上を段階4,20〜50%を段階3に分類する.段階3と4をまとめて徐波睡眠(SWS)と呼ぶことも多い.
 眠りはじめてからおよそ1時間半から2時間すると,突然,脳波パターンは段階1へ移行する.入眠期と違ってこの段階1ではセムはみられず,逆に覚醒時のような急速眼球運動(rapid eye movement:REM)が起こる.さらに頤筋など抗重力筋の緊張が著しく低下する.これが段階1−レムあるいはレム睡眠と呼ばれる状態である.眼球運動の速さは覚醒水準と関係しており,高い覚醒水準ではレム(REM)が連続する.逆に低い覚醒状態ではセムが現れる.睡眠中に眠りが浅くなったり,目が覚めかけたのであれば,セムが現れるはずである.一方,レムであれば脳波は段階1ではなく覚醒(段階W)パターンでなければならない.ところが被験者は眼球だけはせわしなく動かすものの,目を開けたり起きたりせず,行動的には眠りの状態が維持されている.眠っている人にレムが起こるので,この睡眠状態はきわめて逆説的である.そこで古くは逆説睡眠(paradoxical sleep)と呼んだこともあるが,現在はレム睡眠(REM sleep)に統一され,レムを伴わない睡眠をノンレム睡眠(non-REM sleep:NREM sleep)と呼んでいる.図4はノンレム睡眠からレム睡眠への移行状態を示したものである.



図4 . レム睡眠の睡眠ポリグラムと電極配置

ノンレム睡眠(左側)からレム睡眠(右側)へ移行するのに伴いレム(上2列)と筋電(3列目)の消失が認められる.
[Rechtschaffen,A. & Kales,A. 1968 A manual of standardized terminology, techniques and scoring system for sleep stages of human subjects. Washington, DC : Public Health Service, U.S. Government Printing Office. 清野茂博(訳) 1971.睡眠脳波アトラス 標準用語・手技・判定法 医歯薬出版.]

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