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4.睡眠周期と生物リズム
 図5は一夜の睡眠経過を示したものである.睡眠は段階1から順に段階4まで進み,一度段階2に戻ってからレム睡眠(斜線)が出現する.
レム睡眠にはおよそ90分ごとに出現する周期があり,ノンレム睡眠とそれに続くレム睡眠までを1つの睡眠単位として,睡眠周期(sleep cycle)と呼ぶ.一夜の睡眠ではこの周期が4〜5回繰り返されるが,各周期を構成する睡眠段階の割合は一定ではない.徐波睡眠(SWS)は入眠後の2〜3時間に集中して出現し,朝方はほとんど出なくなる.一方,レム睡眠は朝方に向けて増加し,早朝の1時間では20%以上を占めるようになる.



図5. 睡眠の周期

[Dement,W. & Kleitman,N. 1957 Cyclic variation in EEG during sleep and their relation to eye movements, body motility and dreaming. Electroencephalography and clinical Neurophysiology 9:673-690]

 夜間睡眠(主睡眠)の後で,日中のさまざまな時間帯で2時間程度の昼寝(仮眠)をとると,徐波睡眠は午前中にはほとんど出現せず,夕方になるほど多く出現してくる.一方,レム睡眠は午前中に多く,午後3時以降ではほとんど出てこない.一見徐波睡眠もレム睡眠も概日リズムを示しているかのように見える.もし,徐波睡眠が夕方から夜にかけて多く出現する概日リズムを持っているなら,早朝の睡眠ではほとんど出現しないはずである.ところが,夜勤や徹夜後の人で調べると,就床直後の早朝に徐波睡眠が集中的に出現する.徐波睡眠は睡眠前の覚醒時間の長さが関係しており,生物リズムよりも時刻非依存性のホメオスタシス機構によって調節されていることが分かる.一方,レム睡眠は主睡眠の時刻を移動させても,朝方の3時ごろから午後の3時ごろまでの時間帯に集中して出現する傾向は変わらない.このことはレム睡眠が時刻依存性の概日リズム機構によっていることを示している.
 このことを確かめるために,恒常条件下で体温の連続測定とあわせてレム睡眠の出現パターンを調べると,図6のような結果が得られている.体温は概日リズム機構が調節する代表的な生理機構である.体温リズムの最低値位相を0時とし,レム睡眠の出現率を30°ごとにプロットしたものである.恒常環境での睡眠覚醒リズムや体温リズムは,日常生活での24時間ではなく,およそ25時間になっているうえ,個人で微妙に周期が異なる.そこで,通常の1日を24時間とする平均グラフではかえって図が読みにくくなるため,各個人の概日リズムの1日を360°(概日リズム位相)としてグラフを作ることが多い.体温の最低値は,普通,朝方の3時から4時である.横軸の刻み巾30°はおよそ2時間に相当する.レム睡眠の出現率はこの体温が最低値から上昇期に向かう位相で増加し,最高値に近づくと減少している.レム睡眠は概日リズム機構の調節を受け,体温リズムと一定の位相関係を保って変動していることが分かる.



図6. 体温リズム位相に対するレム睡眠の出現様式

[Czeisler CA, Zimmerman JC, Ronda JM, Moore-Ede. & Weitzman. 1980 Timing of REM sleep is coupled to the circadian rhythm of body temperature in man. Sleep,2:329-346 (一部改変)]

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