学会概要

理事長からのご挨拶

日本睡眠学会理事長 内村 直尚

 久留米大学の内村直尚です。2021年7月10日に開催された理事会において、日本睡眠学会理事長に選出されました。日本睡眠学会の歴史と伝統を継承し、さらに発展させることで、学会の持つ力を多くの人や社会に役立てるよう、千葉伸太郎副理事長、井上雄一特任副理事長および山寺亘事務局長とともに全力で取り組みます。

 私たち日本睡眠学会は、約4000名近い会員それぞれが専門分野の垣根を越えて一緒に考えるという学際的な伝統を持っています。毎年の定期学術集会では、その黎明期から、生理学、生物学、臨床医学、臨床検査学、心理学、工学、看護学、公衆衛生・疫学など睡眠に関連した多彩な分野の会員が集い、多様な見地から睡眠について学び考える姿勢を培ってきました。学術集会の会長も多彩な分野から選ばれ、それぞれ特色ある会を開催してきました。今後は様々な分野の中から、女性の理事・評議員の登用や若い世代の今後の睡眠学会を担う人材の育成など、その能力を最大限に発揮できる多様性を重んじて、より活性化したいと考えています。

 公的研究費の枠作りと睡眠学の推進、専門医・専門歯科医制度や専門検査技師制度の整備、保険医療費適正化への働きかけ、睡眠に関する教育の拡充、行政への正確な情報の提供、日本専門医機構サブスペシャルティ領域専門医、2024年からの医師の働き方改革の導入、倫理的問題など、私たちの周りには多くの課題があります。これらに適切に対応するため、日本睡眠学会では分野を超えた会員からなる各種の委員会を設けてきました。

 内山前理事長は委員会の活動がより効果的に行われるように、これまでの委員会を学会運営や各分野の基本的活動に関連する常設の委員会および個別的問題解決のために設けられた作業部会に分け、重要な小委員会は常設の委員会に格上げしました。これにより、各委員会がより力を発揮できるようになりました。このようなシステムが今後より機能的に運営できるようにしたいと思います。

 世界では、世界睡眠学会連合(World Sleep Federation)と世界睡眠医学会(World Association of Sleep Medicine)が2016年に合体し、新たに世界睡眠学会(World Sleep Society)が創設されました。アジア地域では、各国の睡眠学会が活発になり、睡眠研究や睡眠医療に関わる人が増えてきました。今後もアジア・太平洋における睡眠学のさらなる発展につなげたいと思います。

 日本睡眠学会の国際誌Sleep and Biological Rhythms(SBR)のインパクトファクター(IF)が1.186を獲得しました。発刊、IF取得と多くの先輩が努力されてきたおかげです。SBRが、世界における日本睡眠学会の重要な情報プラットフォームになるよう、会員一丸となって努力していきたいと思います。

 さらに近年のビッグデータやAI、高速通信をベースとした技術革新に伴い、産業のみならず遠隔医療等を含めた多くの領域でパラダイムチェンジが起こりつつある世界において、変化する就労や教育、生活様式に対して有益な睡眠学の活用を再考したいと思います。また、新型コロナウイルスの影響による人々の睡眠や身体的・心理的健康や生活スタイルに対する睡眠科学・睡眠医療・睡眠社会学の観点から社会貢献が可能と考えています。

私たち会員の力を集結し、日本から世界へ睡眠学を発信し、日本を含めた国際社会へ貢献していきましょう。

一般社団法人日本睡眠学会
理事長 内村 直尚